研究概要 |
CVD合成ダイヤモンド膜を用いた切削工具が国内外の数社により商品化されているが,密着性や寿命などに問題点を抱えており,問題解決と共にコストダウンが望まれている。密着性・経済性の観点から、as-depo状態でのCVDダイヤモンド工具の作製が必要不可欠である。一方,当研究室でこれまでに行ってきた高過飽和二段階CVD成長法では,ダイヤモンドの核生成密度の増加効果が確認され,高い密着強度をもたらす可能性が示唆されている。そこで,本研究では,この二段階CVD法を用いて超硬材料基体上にダイヤモンドを堆積させた,as-depo状態でのダイヤモンド工具の信頼性を向上させることを目的とする。 通常ダイヤモンド堆積に用いるマイクロ波プラズマCVD装置は,波長の半分以下の堆積面積(60mm径以下)であるため生産性に劣り,また,マイクロ波により導電体は著しく誘導加熱されるため超硬材料基体を用いることが困難である。そこで,本年度は,円筒マイクロ波共振器を用いたエンドランチ型マイクロ波プラズマ発生装置を本研究に転用可能なように,旋盤用切削工具であるスローアウェイチップ(WC-Co製)が複数個配置可能な基体ホルダーの設計を行った。また,通常のダイヤモンドCVD装置を用いた薄板状超硬材料基体上へのダイヤモンド堆積の予備的な実験を行い,二段階成長のパラメーターの最適化を試みている。まず,ダイヤモンド成長に悪影響を与えるCoに関する溶出前処理方法の最適化を行った。次に,本研究室ではこれまでSiを基体に用いて二段階成長を行っていたため,基体の材質による二段階成長における過飽和度の影響について調査した。この結果,WC上ではSi上と比較して,通常の成長における核生成密度が高く,高過飽和度時の核生成密度の増加効果が低いことが判明した。現在,WC上における核生成密度が増加する高過飽和条件を探索している。
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