研究概要 |
前年度において,Fe-Ni系の異常型共析は,主としてFeの共存下における貴な金属であるNi析出の抑制により生じていることがわかった。そこで,本年度は異常型共析機構の解明を目的として,溶媒を水からメタノールに変更して合金電析を行った。その結果,メタノール浴からのFe-Ni合金電析においても,若干の異常性の低減は認められるものの広い電解条件にわたってNi析出速度の減少が認められ,依然として異常型共析挙動を示した。一方,同じように異常型共析挙動を示すZn-鉄族金属合金電析においては,メタノール浴では卑なZnの優先析出現象は消滅し,正常型共析となる。したがって,異常型共析機構の通説とされている水酸化物抑制説をFe-Ni合金電析に単純に適用することには幾分無理があるように思われた。 また,前年度行った合金電析においては,高電流密度域において電析物の外観に劣悪なものが認められた。そこで,添加剤による表面性状の改善を検討した。その結果、ホウ酸の添加が広い電流密度にわたって光沢ある電析物をもたらすことがわかった。 次に,逆磁歪センサーとしての性能を調べるために,ホウ酸を加えた各種電解浴から得られた電析物の磁気特性を調査した。その結果,電析Fe-Ni合金薄膜の保持力は20〜80mass%Niで5〜10Oeであった。スパッタ法で得られた合金の保持力は約5Oeであり,実用的にも保持力は5Oe以下であることが望ましい。そこで,サッカリンを加え,保持力の低減を試みた結果,80mass%Niの合金で2〜3Oeまでに低下させることができた。これは,サッカリン添加により電析合金の結晶粒が細かくなった結果によるものと思われた。
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