研究概要 |
銅スクラップの酸化精製処理により生成する酸化銅基スラグの処理方法として,本年度は硫化物化(マット化)を取り上げ,銅を効率的に回収する条件について検討し,以下の知見が得られた。 得られた試料の状態は,(1)硫化物相と酸化物相は分離するが,硫化物相中にメタル相が析出した場合,(2)硫化物相と酸化物相が完全に分離した場合,(3)硫化物相上部に赤色の酸化物が混在した場合の3種類に大別でき,(1)の状態は比較的硫化剤の量が少ない時に,(3)の状態は硫化剤の量が比較的多い時に発生することが分かった。また硫化反応後の試料の状態は硫黄の量だけでなく,硫化剤中の鉄の量も影響を及ぼすことも分かった。 本実験条件内における硫化物中の銅濃度ならびに硫化率が最も高くなる条件としては,S/O=1.5,Fe/Cu=0.37の場合であり,この条件では上記(2)の状態で得られる。この条件における各不純物元素の挙動を見てみると,Sn,Pb,Zn,Coが移行しやすく,Si,Cr,Alが移行しにくいことが分かった。また,硫化物中に含まれる各不純物元素の合計量は,鉄を除いて約1.3%程度にすぎず,銅製錬所に戻す際に問題に成り得ない程度の量であると言える。したがって,この条件で反応を行うことにより,使用済み酸化銅基スラグを銅品位の高い硫化物として回収でき,これを銅製錬所に戻すことは十分可能であると考えられる。
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