研究概要 |
磁場印加による液体金属流動制御は結晶成長や鉄鋼の連鋳において用いられるが我々は立方体容器内の自然対流について実験的、理論的に検討し、磁場印加による対流促進という定説に反することがあることを理論的に明快に説明した。(Tagawa & Ozoe,J.Heat Transfer,May,1997)これにより一部の人の間に知られていた不可思議な対流促進現象に対する疑問を氷解することができた。これは低プラントル数流体に対する非定常三次元自然対流の数学モデル式に電磁気学に基づくローレンツ力の一般項を導入してできるだけ厳密に解くことによってはじめてできたものである。 本研究においては、これらの結果を基に、鉄鋼の連鋳プロセスにおいて印加すべき磁場について、従来、鉄鋼各社で用いられてきている磁場とは異なる形態の電磁石配置における融鉄流動の数値解析を試み、従来の既存プロセスにおける効果との比較を示す。磁場の配置については、従来、タンディシュの下のモールド部分の長手から一様(新日鉄,住金)、移動磁界(NKK)などが加えられているが、ここでは幾つかの磁石を組み合わせた磁界を形成することによるより強力な流動制御法を提案する。上述の我々の三次元数値解析結果に基づけば、磁界印加の方向によって対流抑制効果が大きく異なるばかりか、方向によっては、対流を促進する副作用までもあることがわかっており、どのような磁界を印加すれば有効に対流抑制が可能かということが理論的に明確となってきたからである。 本年度は初年度であり、まず解析法について、検討した。立方体容器内に液体金属を満たし、側壁より加熱、冷却し、自然対流の数値解析を行った。一方、ビオ・バザールの方程式より、まず2極コイルの場合のカスプ型磁界を取り上げ、カスプ磁界を上記、自然対流系に印加した。このようにして、カスプ磁場の効果を計算中である。また、4極コイルの場合について、磁場の分布を計算中であり、2極との場合の比較に資する。 また、鉄鋼の連鋳プロセスにおいては、タンディシュよりの溶融鉄の流動を助けるためArガスが添加され、二相流となっている。そこで、ガス系、液系内の二重拡散対流についても併行して検討を進めている。ガス系の二重拡散対流においては、温度差浮力と濃度差浮力が、加熱・冷却面上で作用する場合を取り上げ、Ra=10^7,10^8の各場合において、ルイス数0.5〜5の範囲で数値解析し、浮力比に依存して、温度、濃度成層が異なり、さらには振動対流も発生することを見い出した。また液相の二重拡散対流では、初期濃度分布が線形である場合を取り上げ、Ra=1.13×10^7の場合の過渡特性を計算した。その結果、多数のロールセルが最初発生し、時間の経過と共に、その個数が減少した。また物性値の温度依存性を考慮することによって、ロール界面が上方へ移動することを見い出した。さらには、液体金属の二重拡散自然対流で、特異な振動対流を生じることを数値解析した。即ち、Pr=0.01の流体について、温度浮力と濃度浮力が逆方向に作用する場合を取り上げ、低Pr数流体特有の円型ロールセルが回転し、ロールセル同志の衝突により振動対流が発生するメカニズム特性を求めた。
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