医薬品製造などのファインケミカルで、「光学異性体(対掌体)の分離」は非常に重要な操作である。医薬品の場合、一方の対掌体のみが有効であることから、安全性や薬理特性を高めるために不要な対掌体を含まない製品が要求される。本研究は不要な対掌体を異性化反応により、有用な対掌体に変換しつつ、同時に有用な対掌体の優先晶析を行わせる操作を開発するものである。 本研究は2年計画で進められるが、本年度はまず、回分式の装置で、連続化に向けての速度論的検討を行うための実験データを収集した。内容は次の通り。 1. 装置:晶析装置を設計作成した。これはジャケット式ガラス製の撹拌式晶析装置であり、この温度はEYELA製のプログラム式恒温循環システムを付帯させ、緻密な温度制御が行えるようにした。 2. 操作条件:晶析速度(核化速度・成長速度)の操作条件を決定するために対象とした物質の3成分相図(溶媒と2種類の対掌体)を各温度で決定した。このとき。組成は、光学分割用のカラムを用いた、高速液体クロマトグラフシステムLC-1500を用いて測定した。 一連の実験の結果、優先晶析の際、所望の対掌体以外の結晶が析出することが知られているが、これは、所望の対掌体の析出により、不必要なもう一方の対掌体の見かけ過飽和度が増加し、この対掌対が核化することで発生している可能性があることが分かった。さらに、ラセミ化合物を形成する系の場合、ラセミ化合物が析出する条件下でも、対掌体結晶の析出速度を考慮すれば、優先晶析が行える可能性があることが実験的に分かってきた。
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