昨年度は、塩基性を有する酸化物とレドックス能を持つ酸化物から成る複合触媒が、C_2炭化水素の選択性制御とCH_4・CO_2の活性化を同時に達成できることを明らかにした。本年度は、この触媒選択原理に基づき、アルカリ土類金属(Sr、Ba)と遷移金属(Cr、Mn、Zn)を組み合わせた二元系触媒を調製し、CH_4とCO_2の反応を行い、新規触媒を開発するとともに、活性点やメカニズムを解明した。 遷移金属酸化物粉末をアルカリ土類金属硝酸塩水溶液に含浸し、蒸発乾固後に空気焼成した二元系酸化物の中では、Sr-MnとBa-Mn触媒が最も高いC_2収率を与え、特に、前者のC_2選択率は85%に達した。大変興味深いことには、昨年度に報告したCa-Ce触媒とは異なる速度論的挙動が認められ、これらのMn系触媒上では、C_2選択率がCO_2分圧にほとんど依存せず、低分圧下でも選択的にC_2炭化水素が生成した。この結果は、CO_2を含む低品位天然ガスの直接変換利用に発展すると予想され、実用的観点から非常に重要な知見である。 Mn系触媒の結晶形態をXRDで調べたところ、反応前には、両者はともにペロブスカイト型酸化物で存在したが、定常状態での反応後には、おもに炭酸塩とMnOに変化した。後者の時点で、反応ガスを不活性ガスで置換すると、CO_2とCOが脱離すると同時にSrMnO_<2.5>またはBaMnO_<2.5>が生成し、さらに、XPS測定より表面種はMn^<2+>からMn^<3+>に変化することが明らかとなった。このような変化は、CH_4とCO_2との定常反応時に炭酸塩とMnOの界面で進行し、生成したMn^<3+>種(SrMnO_<2.5>またはBaMnO_<2.5>)がCH_4からC_2H_6への選択的変換に関与しているものと推論される。
|