研究概要 |
ディーゼルエンジンやガスタービンなどから発生する酸素を多量に含む排ガス中の希薄窒素酸化物(NOx)の浄化法として、固体吸収材料の利用が注目されている。本研究では、O_2,CO_2,H_2Oなど共存ガスによる被毒を受けないNOx吸収材料を探索した結果、触媒(Pd)と吸収剤(ZrO_2)とを組み合わせた系を見出した。試料の構造、組成および調製法の最適化を図ると同時に、NO吸収脱離性能および吸収NOの浄化法を詳細に検討した。含浸法で得た 0.01PdO-ZrO_2のO_2およびCO_2共存下におけるNO吸収特性を示した。反応温度が低いほど高い除去率が持続し、総吸収量は30℃で0.61mmol/g-ZrO_2に達した。試料は正方晶あるいは単斜晶ZrO_2とPdOとの混合物から成るが、NO吸収に伴う結晶相の変化は認めらない,FT-IRスペクトルによると、NOが酸化され、硝酸根として固体中に取り込まれることが明らかになった。硝酸根はPdOの有無に関わらず生成するため、NOは気相酸素でNO_2へと酸化された後、ZrO_2と反応するものと推定される。NO吸収後の試料をHe気流中で昇温した場合、NOの脱離は100℃および300℃にピークを示し、400℃以下の低温で完結した。O_2共存下でNO吸収後の0.01PdO-ZrO_2に室温でH_2を導入したところ、N_2の発生が確認できた。この結果は、吸収除去したNOxを還元剤を用いて浄化できる可能性を示唆している。また、流通系反応装置において試料にNOを供給しながら、試料温度を吸収温度(30〜300℃)および脱離温度(300〜600℃)で周期的に変動させた場合の、出口ガスのNOx濃度を調べた。NO吸収はO_2共存下で促進され、0.6mmol/g-ZrO_2の吸収と脱離が可逆的に繰り返された。ZrO_2と0.01PdO-ZrO_2とを比較すると、後者ではNO脱離がより速やかに進行しており、PdOはNO脱離を促進する効果を有すると考えられる。
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