研究概要 |
sp2炭素からなる触媒の担体として活性炭はさまざまな反応で用いられているが、sp3炭素からなるダイヤモンドを触媒担体に用いた例はない。本研究は工業用微粉末ダイヤモンド表面を酸化した、酸化ダイヤモンドを触媒担体,として用い、種々の金属または金属酸化物を担持し、2,3の反応に適用し、sp3炭素からなる酸化ダイヤモンドが、優れた触媒担体となることを世界で初めて明らかにしたものである。 1.種々の金属酸化物を酸化ダイヤモンドに担持した触媒を用い、エタンの脱水素反応を行ったところ、酸化クロムを担持した触媒が高い活性で、エチレンを生成することを見いだした。このとき、エタンの希釈剤として、二酸化炭素を共存させるとエチレンの収率が650℃において、不活性ガスで希釈したときの3倍の23%に達した。 2.ニッケルを酸化ダイヤモンドに担持した触媒を用いてメタンの部分酸化を行った。650℃で高い収率でメタンから合成ガスが生成し、反応温度を700℃まで上昇すると、炭素析出を全く起こさない、優れた担体であることを見いだした。また、コバルトを担持したときも高い収率と選択性で合成ガスを生成することを見いだし、このときは反応温度に関係なく炭素析出が起こらないことを明らかにした。 3.メタノールの分解反応をニッケル担持酸化ダイヤモンド触媒を用いて行った。250℃から活性を示し,300℃では80%以上の収率でメタノールから一酸化炭素と水素を1:1の量論比で生成したが、一部メタンが生成し、水素が消費された。水をメタノールと同時に加えると、メタンの生成はメタノールの分解に影響を与えずに抑制された。 上記3反応について、反応機構を非定常反応、反応前後の触媒の分光学的検討などから明らかにし、いずれも酸化ダイヤモンド上の金属または金属酸化物が担体との弱い相互作用により、従来の触媒担体よりも活性化を促進することを明らかにした。
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