研究概要 |
線虫などの寄生虫感染が起こると大量のIgE抗体が産生されるが、大部分のIgEは寄生虫抗原に特異的ではない。このようなIgEはB細胞がCD40LとIL-4等の刺激によりpolyclonalに活性化された結果、産生されると考えられている。一方、我々は成熟B細胞がこのような刺激を受けると、RAG遺伝子発現とそれに伴う2次的V(D)J再構成(receptor editing)が起こることを明らかにしている(Hikida et al.,Science274,2092(1996))。今回、マウスにNippostrongylus brasiliensis(Nb)を感染させたとき誘導されるpolyclonal IgE抗体のrepertoireが、末梢でのreceptor editingによりどのような影響を受けているか検討した抗NP mAb(17.2.25)のV_HDJ_Hカセット(V_HT)を一方のalleleのJ_H部位に組み込んだ(V_HT xB6)F1マウス(以下F1と略称)を用いた。BALB/cにNbを感染させると、2週間後にIgEの血中濃度が100-200μg/mlに上昇したが、Nb抗原特異的IgE抗体はほとんど検出されなかった。F1マウスにNbを感染させると、同様にIgE産生が誘導されたが、抗NPIgE抗体の割合はIgMクラスに比べ低下していた。この場合もNb特異的IgE抗体は検出されなかった。非感染マウスの脾臓B細胞をLPSで刺激したとき産生されるIgMの80%以上がV_HTを保持していたが、Nb感染後に生成するIgE抗体ではこの割合が10%以下に低下していた。Nb感染後の脾臓ではRAG-2の発現が認められた。これらの結果はNb感染によって産生されるいわゆるpolyclonal IgE抗体の抗原特異性は末梢におけるreceptor editingによる変化を受けていることを示している。
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