研究概要 |
蛍光法は化学種の検出において一般に極めて高感度であるが、細胞内物質の計測、特に診断目的の定量評価では解決すべき問題が多い。非特異吸着した蛍光プローブからのバックグランド、生体内有機分子からの蛍光バックグラウンド、細胞組織の光散乱による定量性・再現性の劣化、検量線作成の困難などが原因となる。一方、細胞単位での診断の必要性は増加しており、その技術的指針が求められる。そこで本研究は、レーザー蛍光分光顕微鏡のハードウエア・ソフトウエア両面での技術開発をベースに、細胞内の目的物質を選択定量する実用的手法を確立すること、体液中の特定のウイルスを短時間で計数する手法を完成して応用することを目的としている。本研究で用いる主要設備は、既存のレーザー光源および共焦点顕微鏡システムと、顕微鏡に組み込んで用いる2次元画像分光システム(本度導入済)である。これにより、バックグラウンド蛍光の軽減、ベースラインの安定性と,補正精度の向上、細胞膜による光散乱の軽減を図る。3年計画の初年度である本年度は以下を検討した。 1. 2次元分光システムの機種選定、ソフトウエア等を含めての詳細な仕様の確認、顕微鏡との接合部の設計などを行い、システムを発注導入して顕微鏡と組み合わせるとともに、蛍光励起用にレーザー光源系を組みレーザー蛍光分光顕微鏡をシステム化した。 2. 上記システムの性能を確認を兼ねて、蛍光色素分子を分散した水面の観測を行い、水面上蛍光分子の会合挙動を検討した。また、レーザー共焦点顕微鏡を用いて水面上の蛍光性分子のみをバルク溶液中の蛍光性分子と区別して選択的にカウンティングすることを試み、2次元稀薄気体状態の分子挙動に関して新たな知見を得ている。 3. モデル試料系として、数種類の蛍光色素で別々に染色した粒径の異なるポリスチレン微粒子の色素溶液を用いて、選択定量性を検討して本システムの性能を評価した。
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