蛍光法は極めて高感度だが、細胞内物質の診断目的の定量評価では、非特異吸着した蛍光プローブや生体内有機分子からの蛍光バックグラウンドの影響が大きいために高感度性を十分に生かすことができないうえに、細胞組織の光散乱により定量性・再現性の劣化するなど解決すべき問題が多い。一方、細胞単位での診断の必要性は増加しており技術的指針が求められている。そこで本研究では、3次元レーザー蛍光分光顕微鏡のハードウエア・ソフトウエア両面での技術開発をベースに、細胞内の目的物質の選択定量を可能とする実用的手法の開発を目的として検討した。3年度計画の最終年度に当たる本年度は以下を検討して成果を得た。 1)画像スペクトル測定とデータ処理による微粒子の識別を検討した。粒子直径4、7、11μmのイオン交換樹脂に多種類の色素を別々に吸着させて混ぜ合わせた試料系を調製して個々の粒子の識別を検討した。発光スペクトルの形状が類似し、ピーク波長に5〜10nmしか差が無い場合でも粒子識別が可能であることを実証した。 2)蛍光バックグラウンドが大きい悪条件下での粒子識別を検討した。粒子に吸着した色素と未吸着色素とでスペクトルシフトが見られる場合を想定して、濃厚色素溶液中に浸した粒子について測定し、スペクトルによる識別が粒子識別に有効であることを実験的に検証した。 3)顕微鏡下にある個々の粒子への色素吸着量を検討し検出限界を求めた。散乱光の影響が大きいために個々の粒子について30%程度のばらつきが生じるものの、定量性があること、粒子当たり10^<-18>モルでの検出が容易であることを示した。また、粒子表面と内部の吸着を区別できる可能性を示した。 4)以上の実験結果に基づき、蛍光強度・色調・バックグラウンドを判断して微小物体中にある特定の蛍光色素からの蛍光強度を補正定量する手法の指針を得た。研究成果はまとめて一部公表した。
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