研究概要 |
ディスプレイに代表される液晶デバイスにおいて、液晶の配向制御は非常に重要な技術である。「液晶配向制御」を考えた場合,1)如何にして液晶分子に高い配向状態をとらせるか(静的な配向制御),2)並べた分子を如何にして効率よく駆動するか(動的な配向制御),という二面性を考慮する必要がある。 1)に関しては,現在,基板を配向膜と呼ばれるポリマー(主にポリイミド)で被覆し,その表面を繊維ロールで機械的に擦るラビング法と呼ばれる処理が施されている。最近では,デバイス性能の向上・作製プロセスの簡略化の観点から従来のラビング法の代替技術として光配向が注目されている。本研究では昨年度,偏光照射によって光分解をほとんど伴わず、かつ効果的に液晶配向を実現できる光応答性ポリイミド配向膜を開発し,新しいラビングレス液晶配向制御方法を提案した。2)の液晶駆動については,液晶分子の誘電異方性に基づく電界応答を利用した配向制御が主流である。そこで本年度は,光応答性ポリイミド配向膜を利用した液晶の光駆動を試みた。セルギャップが5μmの液晶セル中にネマチック液晶を封入することによって測定用のサンプルを調製した。直交した二枚の偏光板の間に液晶セルを置き,光照射によるプローブ光の透過光量変化を測定することにより液晶の配向変化挙動を評価した。まず,透過光量(T)と印加電圧(V)の関係を,光照射下と未照射下において調べた。得られたT-V曲線から,配向変化が誘起される閾電圧は光照射下と未照射下とでは著しく異なり、光照射下では閾電圧が低下した。次に,未照射下においてホモジニアス配向が保持されている4.5Vにバイアス電圧を設定し,光照射による透過光量変化を調べた。光照射すると直ちに透過光量は減少し,ホモジニアス配向からホメオトロピック配向へと変化することが明らかとなった。本研究をとおして,「液晶配向制御」技術における光応答性ポリイミド配向膜の優れた潜在能力を示すことができた。
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