研究課題/領域番号 |
10555306
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岸尾 光二 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (50143392)
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研究分担者 |
兼子 哲幸 住友電工, 基盤技術研究所, 主任研究
佐藤 謙一 住友電工, 基盤技術研究所, 部長
越智 健二 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (00301127)
下山 淳一 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (20251366)
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キーワード | 超伝導材料 / 高温超伝導体 / 酸化物 / 臨界電流密度 / 液体窒素 / 線材 / テープ / プロセス制御 |
研究概要 |
発見から10余年が過ぎ、当初より産業界から大きな期待がかけられていたにもかかわらず、酸化物高温超伝導実用線材の液体窒素温度における実用化の見通しはまだ立っていない。これは主に、酸化物高温超伝導物質の高温での磁束ピニング特性が不十分であることによる。また、臨界温度が極めて高く良好な臨界電流特性が期待される水銀(Hg)1223系などでは、作製の困難さや劣化など化学的安定性の問題点もある。 本研究では、Hg1223系やビスマス(Bi)2212,2223系を中心とした次世代酸化物高温超伝導材料の安定化、および臨界電流待性の改善をはかり、液体窒素温度における各種実用用途に供する線材の作製手法を確立することを目的として研究を行った。Hg系超伝導体は化学的に不安定で、従来その作製が困難であるとされていたが、本研究代表者らは先に、レニウム(Re)やクロム(Cr)などの遷移金属の添加により、相が安定化されると同時に臨界電流密度の向上も達成できることを見いだしており、本研究では溶融凝固法の適用により様々な厚膜テープの作製を行った。特に、テープの基体材料を検討した結果、Ni/Cr/Agの3層構造が最適であることを見いだした。さらに、Re置換Hg系1223,1234,1245など一連の単結晶を育成することに成功し、基礎物性の評価に供することが可能となった。 いっぽう、高温超伝導材料として現在唯一実用化されているBi系超伝導体は、磁場下での臨界電流密度の向上が課題であるとされていたが、鉛(Pb)を大量にドープすることによりこのことが達成できることを発見した。添加Pb量、酸素量を調節したBi2212相超伝導体について特性向上の原因を明らかにするため、単結晶を育成し、異方性など電磁物性の詳細な評価を試みた。また、Agを基体材料とするBi(Pb)2212テープ材料の作製プロセス開発を行った。熱処理条件の最適化により良好に結晶配向し不可逆磁場の高いテープ材を得たが、通電特注はいまだ十分でなく、特に粒界接合の向上などを次年度の研究課題とする必要がある。
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