研究課題/領域番号 |
10555315
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小川 昭弥 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (30183031)
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研究分担者 |
平尾 俊一 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90116088)
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キーワード | ヨウ化サマリウム / 光励起 / 還元 / 還元的脱ハロゲン化 / 電子移動 / 官能基選択的還元 / 還元的脱セレノ化 / 炭素-炭素結合生成 |
研究概要 |
本研究では、希土類イオンの光反応挙動を解明し、これに基づく炭素一炭素結合生成の新手法を確立することを目的として、ヨウ化サマリウム-光還元系について詳細に検討した。その結果、(1)ヨウ化サマリウム単独では困難なアルキルクロリドの還元的脱クロロ化反応が、可視光を照射することにより、すみやかに進行することを見い出した。(2)照射する光の波長を変化させた実験がら、ヨウ化サマリウムの活性化に必要な光の波長領域は、500〜650nmであることが明らかとなった。これはサマリウムの4f→5d遷移に基づくものであり、励起サマリウムからの一電子移動が、基底状態に比べ格段に高いことを示している。(3)ヨウ化サマリウム-光反応系を用いて、種々の有機化合物の還元を系統的に検討した結果、炭素-塩素結合だけでなく、炭素-臭素、炭素-硫黄、炭素-セレン、炭素-テルルなどの結合の還元的な開裂が光照射系において効率良く進行することが明らかとなり、還元の条件を適切に設定することにより、官能基選択的な還元法となることが明らかとなった。(4)上記の還元特性を他のヨウ化サマリウム反応系と比較したところ、ヨウ化サマリウム-光系は、ヨウ化サマリウム単独系、ヨウ化サマリウム-金属サマリウム系よりも数段高い還元能力を有しており、さらにこれまで最も高い還元能力を示すと考えられていたヨウ化サマリウム-HMPA系よりも数倍高いことが明らかとなった。(5)上記の還元系を、ラジカル環化系やカルボニル化反応系と組み合わせることにより、還元的新規炭素-炭素結合生成反応を見い出した。以上の結果は、希土類試薬の本質的な反応特性を解明するものであるとともに、有機合成に広く利用可能な新還元系が開発されたものと考えられる。
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