研究概要 |
活性型ビタミンD(1α,25(OH)2-D3)は体内のカルシウム代謝を担う活性種であるが、白血病細胞の分化誘導作用をはじめとして癌細胞の増殖抑制作用など多彩な生理作用を示すことが報告されている。しかし、活性型ビタミンDそのものを白血病や癌治療薬として使用した場合、その大量投与による副作用、高カルシウム血症が問題となる。 従って、治療薬としては本来のカルシウム代謝作用を抑制し分化誘導作用を高めた、いわば作用分離のなされた誘導体の開発が必要とされていた。そこで本申請研究は、申請者らが独自に開発したエン反応を基盤に、側鎖、A環、D環の実用的修飾法を開発するとともに、全く新しいビタミンD誘導体を創製することを目的とした。 本研究は側鎖、A環あるいはD環の修飾によって作用分離のなされたビタミンD誘導体を開発しようとするものであり、本年度は昨年度の研究成果をもとに引き続きA環の修飾を検討した。昨年度は19-nor体をA環の基本骨格とし、水酸基の数およびその絶対配置、相対配置あるいは置換基を導入した各種異性体を設計し、これらの不斉合成を申請者らが独自に開発した不斉触媒を用いることによって達成している。そこで本年度はビタミンDレセプターとビタミンD誘導体のバインディング状態を解明するべく、2位にフッ素を導入したA環部誘導体の立体選択的合成に取り組んだ。その結果、2位フッ素化したA環部が立体選択的合成できることを明らかにし、得られたA環部誘導体をビタミンD誘導体へと導いた。
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