研究概要 |
本研究はラジカル開環重合による新規高分子エマルジョンの合成を目的とする。平成10年度はまず予備検討として環状チオアセタール環、アミド、エステル、トリメチルシリル基を有するビニルシクロプロパンを合成し、そのラジカル重合挙動を検討した。環状チオアセタール環を有するビニルシクロプロパンのラジカル重合性は低く、これはチオエーテル基がラジカルを不安定化するためと考えられた。これに対して、アミド、エステル基を有するビニルシクロプロパンのラジカル重合性は良好であり、定量的な収率で1,5-開環重合した構造のポリマーを与えた。2官能のビニルシクロプロパンの重合では定量的に架橋ポリマーが得られた。トリメチルシリル基を有するビニルシクロプロパンの重合で得られたポリマーは求電子剤と反応し、対応する付加物を与えた。ラジカル重合性の高かったエステル基を2個有する1,1-ビス(エトキシカルボニル)-2-ビニルシクロプロパンの乳化重合を、界面活性剤にラウリル硫酸ナトリウム、開始剤に過硫酸カリウムを用いて行った。ソープフリー乳化重合の場合、数平均分子量30700、粒子系経0.53ミクロンのエマルジョンが、ソープイン乳化重合の場合数平均分子量59700、粒子経0.09ミクロンのエマルジョンが得られた。さらに、コモノマーにスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、アクリル酸メチルを用いて乳化重合を検討した。酢酸ビニルをコモノマーに用いた場合、共重合が効率よく進行し、対応する共重合体のエマルジョンが良好な収率で得られた。平成11年度は前年度の結果を受けて、より重合性の高いモノマーとして、アクリラート・ビニルエーテルのハイブリッド構造を有する5-メチレン-1,3-ジオキソランの合成とラジカル重合を検討した。同モノマーは0℃でのレドックス系においても極めて高い重合性を示し、数平均分子量1万のポリマーを高収率で与えた。ポリマーは開環重合体ではなく、ビニル重合体であった。同ポリマーはアルカリ加水分解によりポリヒドロキシルアクリル酸に定量的に転換できた。
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