研究概要 |
本研究は種々の気体・有機蒸気を分離しうる高分子膜、特に置換ポリアセチレンを基本骨格とする高分子膜の設計、合成を検討し、分離膜の分子設計めための普遍的な指針を得ることを目的とする。具体的には、ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン]およびポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体の合成とその分離能の評価を行い、置換基の形状が分離能に及ぼす影響を系統的に検討する。さらに、これらの諸物性を比較検討し、実用化への可能性を明らかにする。以下に本年度の研究結果の要点を記す。非常にかさ高いシリル基を有する、1-フェニル-2-[4-(トリフェニルシリル)フェニル]アセチレン(ρPh_3SiDPA)および1-フェニル-2-[4-(トリイソプロピルシリル)フェニル]アセチレン(ρiPr_3SiDPA)の重合と生成ポリマーの性質について検討した。これらのモノマーはTaCl_5系触媒により好収率で重合した。ポリ(ρPh_3SiDPA)とポリ(ρiPr_3SiDPA)の最大の重量平均分子量はそれぞれ1x106および4.8x106であった。これらのポリマーは黄色ないし橙色固体で、トルエン、クロロホルムなどに可溶であり、キャスト法により自立膜を生成した。ポリ(ρPh_3SiDPA)とポリ(ρiPr_3SiDPA)の空気中での重量損失開始温度はそれぞれ430,270°Cであった。25°Cでの両ポリマーの酸素透過係数は3.8,20barrerであり比較的小さかった。さらに、かさ高くて球状のアダマンチル基を有する3種のポリアセチレンを合成し、それらの気体および有機蒸気透過性についても現在検討中である。
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