研究概要 |
本研究は種々の気体・有機蒸気を分離しうる高分子膜、特に置換ポリアセチレンを基本骨格とする高分子膜の設計、合成を検討し、分離膜の分子設計のための普遍的な指針を得ることを目的とする。以下に本年度の研究結果の要点を記す。 1.ポリ(p-Me_3SiDPA)膜中の気体および有機蒸気の透過性および透過機構―――ポリ(p-Me_3SiDPA)膜中の単一ガスの透過性および吸着挙動を、ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン][ポリ(TMSP)]などとの比較の下に検討した。ポリ(p-Me_3SiDPA)は水素などの小さな気体と比べてn-ブタンなどの大きな凝縮性蒸気をより透過させやすかった。このポリマーの自由体積や透過性はポリ(TMSP)と比べて小さかったが、従来の多くのガラス状ポリマーと比べて相当大であった。高温ほど小さな気体の透過性は増加したが、凝縮性蒸気の透過性は低下した。他の超ガラス状ポリマーと同様、このポリマーは二元収着機構を示した。 2.アダマンチル基を含有する置換ポリアセチレンの合成および気体透過性―――パラ位にアダマンチル基を有する1-クロロ-2-フェニルアセチレン、1-フェニル-1-プロピン、およびジフェニルアセチレンをMoCl_5およびTaCl_5に基づく適当なメタセシス重合触媒の存在下で重合させることにより高分子量ポリマーが高収率で得られた。生成ポリマーはいずれも良好な熱安定性と溶解性を有し、キャスト法により丈夫な膜を生成した。後二者からのポリマーの室温における酸素透過性はそれぞれ8.6,55barrerで比較的小さな値を示した。
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