置換ポリアセチレンを用いた気体/有機蒸気分離膜の開発

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10555325
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 増田 俊夫 京都大学, 工学研究科, 教授 (60026276)
• 研究分担者: 蜂須賀 久雄 日東電工(株), メンブレン事業部, 副主任研究員
• キーワード: 置換ポリアセチレン / ポリ(ジフェニルアセチン)誘導体 / 分離膜 / 気体透過性 / 有機蒸気透過性 / 成膜性 / ガラス状ポリマー / 光学活性膜

研究概要

本研究は種々の気体/有機蒸気を分離しうる高分子膜、特に置換ポリアセチレンを基本骨格とする高分子膜の設計、合成を検討し、分離膜の分子設計のための普遍的な指針を得ることを目的とする。以下に本年度の研究成果の要点を記す。
1.ポリ[1-(トリメチルゲルミル)-1-プロピン]の合成、構造、および特性-1-(トリメチルゲルミル)-1-プロピンの重合をTaCl_5およびNbCl_5を用いて検討した。生成ポリマーは白色固体で、分子量は約3x10^5-14x10^5であった。NbCl_5により得られたポリマーはTaCl_5を用いた場合と比較して溶解性が低く、^<13>C NMRによる立体構造解析の結果、シス含率がより大きいことに起因することがわかった。本ポリマーの酸素透過係数(Po_2)は7800 barrerであり、経時劣化はほとんどみられなかった。
2.かさ高いキラルシリル基を有するポリ(フェニルアセチレン)の合成、キラル特性、および高気体透過性-不斉ケイ素を含むかさ高い置換基を有するフェニルアセチレン、(+)-1-p-{[メチル(1-ナフチル)フェニル]シリル}フェニルアセチレン(MeNpPhSi^*PA)がRhあるいはW触媒により重合し、収率よく高重合体を与えた。Rh触媒で得られたポリ(MeNpPhSi^*PA)は大きな比旋光度を有しており、CDスペクトルはUV吸収領域大きなコットン効果を示した。ポリ(MeNpPhSi^*PA)のPo_2は900 barrerであった。
3.p-[トリス(トリメチル)シリル]フェニルアセチレンのホモポリマーおよびコポリマーの合成、キャラクタリゼーション、および酸素透過性-p-[トリス(トリメチル)シリル]フェニルアセチレン[p(Me_3Si)_3SiPA]の単独重合および共重合をRh触媒を用いて検討した。単独重合では不溶性ポリマーを生成した。一方、p-(トリメチルシリル)フェニルアセチレン(pMe_3SiPA)との共重合は種々の仕込み比で進行し、収率よく可溶性のコポリマーを与えた。^1H NMRよりコポリマー組成は仕込み比にほぼ対応していることが明らかとなった。コポリマー中のp(Me_3Si)_3SiPA含量の増加に従い気体透過性は増大し、仕込み比80:20の時コポリマーのPo_2は770barrerであった。

研究成果

• [文献書誌] M.Teraguchi: "Synthesis and Properties of Copolymers from 1-[3,5-Bis(trimethylsilyl)phenyl]-2-phenylacetylene"J.Macromol.Sci.,Pure Appl.Chem.. A37. 1173-1184 (2000)
• [文献書誌] G.Kwak: "Synthesis, Structure, and Properties of Poly [1-(trimethylgermyl)-1-propyne]"J.Polym.Sci.,Part A,Polym.Chem.. 38. 2964-2969 (2000)
• [文献書誌] G.Kwak: "Synthesis, Chiroptical Properties, and High Gas Permeability of Poly(phenylacetylene) with Bullky Chiral Silyl Groups"Macromolecules. 33. 6633-6635 (2000)
• [文献書誌] G.Kwak: "Synthesis, Characterization, and Oxygen Permeability of Homo- and Copolymers from p-[Tris(trimethylsilyl)silyl]phenylacetylene"Polym.Bull.. 45. 215-221 (2000)
• [文献書誌] K.Nagai: "Gas Permeability and Hydrocarbon Solubility of Poly[1-phenyl-2-[p-(triisopropylsilyl)phenyl]acetylene](PTPSDPA)"J.Polym.Sci.,Part B,Polym.Phys.. 38. 1474-1484 (2000)