研究課題
基盤研究(B)
DNAは全ての生物の遺伝子本体であり、生命科学の中心に位置する物質であるため、分子生物学の諸分野で多くの研究が精力的に行われてきた。しかし、DNAを異なった側面から見るとこれは天然に大量に存在する超高分子物質であり、しかも様々の物質と極めて特異性、選択性の高い相互作用をする機能性物質とも言える。本研究では、特に北海道で多量に廃棄されているサケ白子DNAを含む各種の機能性複合素材を開発し、例えば生医学材料などとしての実用化を目指すものである。コラーゲンは動物タンパク質の約3分の1をしめるほど生体にとって主要な物質であり、その線維化に関しては生医学材料としての重要性から多くの研究がなされている。現在まで当研究室で、DNAがコラーゲンの線維化を促進し、さらに完全な横紋構造を持つ巨大なDNA-コラーゲン複合体線維を形成することを明らかにしたことは生医学分野での利用の面から極めて重要である。さらに、コラーゲン水溶液をDNA水溶液中に押し出すと、DNA-ユラーゲン複合体が形成されることが明らかとなり、この方法によりDNA-コラーゲン複合体のフィルム、繊維、ゲル等を調製できることがわかった。主としてこの知見をもとにして次の研究を行った。(1)金属を担持させたDNA-コラーゲンによる抗菌性、抗腫瘍性フィルムの開発DNAの銀等との金属錯体は抗菌性、抗腫瘍性を持つと言われているので上記の方法で不溶化したDNA-コラーゲン複合体と重金属との錯体を用いて徐放性の抗菌、抗腫瘍性フィルムを開発する基礎研究を行った。(2)抗DNA抗体検出キットの開発全身性エリテマトーデス(SLE)患者血清中に存在し、病因と深い関連のある抗DNA抗体検出キットの開発研究を、DNA-コラーゲンを用いるELISA法で行った。(3)外科手術用補助素材の開発外科手術後の臓器どうしの癒着を防止する癒着防止剤や切開部の縫合補助、出血防止を目的とした組織接着剤、止血剤をDNAを含む各種複合素材を用いて検討した。
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