プラズマトーチの水素噴流着火特性に対する気流マッハ数の影響を調べるために、前年度製作した設計マッハ数2のノズルに加えて、設計マッハ数2.5及び1.5のノズルを製作した。また、マッハ数と独立に静圧を変化させるため、ノズル上流に取り付ける多孔板と整流格子がついたダクトを製作し、流入空気総圧を大気圧から65kPaまで変えられるようにした。さらに、トーチ周辺の流れ場を観測するために、既存レーザ光源を利用して粒子画像速度計を構成するため、レーザパルス・シンクロナイザ等を整備した。 気流総圧一定でマッハ数を変えた実験では、マッハ数が高くなるほど着火しにくくなることが分かった。この原因として、マッハ数の増加に伴う静圧と静温の低下及び気流滞留時間の減少が考えられる。これらの影響を分離して調べるために、マッハ数を一定として静圧を変化させる実験を行った。その結果、主流静圧の低下に伴い着火は起こりにくくなるが、トーチ自身が境界層剥離を引き起し着火しやすくなる場合も生じた。また、プラズマ作動ガスの影響を調べるために、窒素に体積分率で2〜80%の水素を混ぜた混合ガスを用いて、トーチの作動特性及び着火特性を実験した。その結果、水素割合が高くなるほどトーチの作動可能下限電力が増大し、水素割合が80%の場合には現用の電源では作動できなかった。着火特性は、水素割合が30%以上になると顕著に改善された。 理論解析では、まず窒素・水素混合ガスを作動ガスとした場合の、トーチ出口における化学平衡組成を計算した。その結果、投入電力が少ない場合には、少量の水素添加によりラジカルの割合が著しく増加することが分かった。また、トーチ上流から水素燃料を噴射した場合の着火の二次元数値シミュレーションを行い、反応はまずトーチ噴流の上流側ではじまること、アルゴンは他の作動気体に比べて着火が起こりにくいことなどを明らかにした。
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