研究概要 |
プラズマトーチから噴出するプラズマジェットのスペクトルを分光器により測定し,作動気体及び投入電力により観察される発光のピーク波長とその強度の変化を調べた。各作動気体に対して,その分子が解離した原子の発光ピークを観察した。窒素-水素混合気を作動気体とした場合のN原子及びH原子のピーク強度の挙動は,水素割合の増加に伴いH原子のピーク強度は単調に増大するが,N原子のピーク強度は一旦増加した後にやや減少した。この変化は,プラズマジェットが一様な熱化学平衡状態にあると仮定して得られるN原子が急速に減少する計算結果と定性的に異なっていた。これらの結果及びプラズマトーチのみを超音速気流中で作動させた場合の壁圧分布の変化に基づき,高い割合で水素を含む窒素-水素混合気を作動気体とするプラズマトーチの着火性能向上は,トーチへの投入電力にトーチから供給される水素が空気と燃焼した際の発熱が加わることにより生じることを示した。また,吸込み式超音速風洞中でトーチから供給される励起された原子からの発光ピーク強度の空間分布を測定した。その結果,O原子の発光が最も下流まで観測されたが,その範囲はトーチ・スロート直径の10倍以下にすぎなかった。着火実験における下流燃焼噴射孔はトーチ・スロート直径の30倍以上下流にあったため,トーチで生成されたラジカル(解離原子)の存在が着火特性にほとんど影響しなかったものと考えられる。 水素添加により増大する窒素-水素トーチの最小作動電力の低減を狙って,一旦作動開始後に電力を下げて放電を維持できるか否かを調べたが,一旦起動した放電の維持にも起動時と同じ電力が必要なことが分かった。
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