本年度は、科研費交付最終年度にあたる為、これまでに開発した吸収分光システムを実際の高エンタルピー風洞試験に適用し、その汎用性や問題点を調べた。実験は東京大学のアークジェット風洞、多治見市(株)超高温材料研究センターのアーク加熱風洞、名古屋大学アークジェット、ドイツ・シュツットガルト大学電磁流体加速風洞、誘導加熱プラズマ風洞、調布市航空宇宙技術研究所のアーク加熱風洞の計6施設を用いて行った。どの風洞でも、得られるプルームも、総温は1万度以上、静温でも5000度以上の高温流体である。 研究成果は以下のように要約される。 1)コンピューター断層法を用いて計測データ処理し、3次元分布を得る技術を確立した。 2)酸素原子の吸収ラインにアクセスし、準安定準位の数密度分布、並進温度分布を得ることができた。その結果、酸素はプルーム周辺から中心に向けて徐々に拡散混合していることが明らかとなり、コンストリクター型アーク風洞で電極保護の目的でヒーター下流から供給される酸素が、主流のアルゴンあるいは窒素と効率よく混合せず、期待した乖離度が得られていないという、重要な問題提起を行うに至った。 3)誘導加熱プラズマ風洞プルーム計測で準定常作動であっても、オペレーション状態に合わせて、波長掃引速度を1Hzから300Hzで調節することにより計測ができることが示された。 4)レーザー誘起蛍光法や発光分光法が苦手とする、光学的に厚い(発光・吸収の強い)プルームも、問題なく計測することができることが示された。 5)日本各地やドイツに計測装置を運んで、各種の風洞で計測を行うことによって、このシステムの汎用性とポータビリティが実証できた。 6)今後の問題点として、本システムを幅広い応用に供する為には、測定感度の向上が不可欠であることが認識された。
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