研究概要 |
本研究の目的は,空間スケールが数十mから数+kmの範囲を対象とした局所地形規模の大気流れを精度良く数値解析するための計算コードを開発し,実用化することである.このため,本年度の目的を次のように設定した.(1)一連の風環境数値解析システムの開発,特に数値解析の力学フレームとして最も基本的で重要な格子生成法を確立すること.(2)その格子系に適した変数配置,計算アルゴリズムを検討し,計算を精度良く安定に進めるための手法を開発することである.これらに対し,以下のことが達成できた. (1)複雑地形および複数建物群などの複雑な形状を容易に表現することが可能な格子生成方法を開発した.その方法とは,複雑地形を直方体の積み重ねで近似する方法である. (これを「矩形格子近似法」と呼ぶことにする).この矩形格子近似法は格子生成が極めて簡単で,前処理に要する時間が節約でき,なおかつソルバー自体も簡略化される.将来の計算機能力の向上を見込むと,地形表面で格子間隔を密にしさえすれば,精度の向上が保証されている.格子の分解能をどの程度にするかはCFD(数値流体力学)では慎重なsensitivity testが要求され,かつ労力の必要なステージである.複雑地形として最も基本的な孤立峰周りの流れに,この矩形格子近似法と一般化座標を使ったBFC(Body-Fitted Cordinate)法による解析を適用し,計算能率を比較した.同程度の未知数を使用した場合,矩形格子近似法では十分な精度と計算速度の向上が認められた.また,この方法を適用するに当たっての技術的な知見をいくつか得ることが出来た. (2)矩形格子近似法では変数のスタッガード配置が計算の安定性.精度上,最も有効な配置であることを見出した.またBFCは変数のコロケート配置が最も適していることを明らかにした.今後はこれらを用いて,大気の温度効果を考慮した成層流および高レイノルズ数化を目指した開発を行う予定である.
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