研究概要 |
本研究の目的は,空間スケールが数十mから数十kmの範囲を対象とした局所地形規模の大気流れを精度良く数値解析するための計算コードを開発し,実用化することである.このため,本年度の目的を次のように設定した.(1)高いレイノルズ数流れの計算を行うため,LES計算を進める.(2)各種の格子系に適した変数配置,計算アルゴリズムを検討し,計算を精度良く安定に進めるための手法を開発する.(3)乱流場としての流入条件を検討し,乱流境界層中の地形,地物周りの流れの計算を進める.これらに対し,以下のことが達成できた. (1)LES計算においては,まず基本的なモデルとなるスマゴリンスキーモデルを採用し,基本流れとなる平行平板内の流れを計算した.十分な精度の解が得られたので,複雑地形へと発展させた.具体的な対象として海上空港となる新北九州空港周辺の流れをLESでシミュレートした.平行して行った風洞実験において流れの可視化で得られた特徴(具体的には内陸側の山間部からの大規模な渦構造を伴った大きな乱れを有する風)が,本LES計算においても明確に捉えられた.(2)計算格子として複雑地形を表現するために矩形格子近似法を採用した.この変数配置ではスタッガード配置が計算の安定性,精度上,最も有効な配置であることを見出した.またBFCは変数のコロケート配置が最も適している.(3)実際の大気流れを計算するためには,流入条件として乱流場を模擬する必要があるが,本研究では計算領域の上流にドライバ部を設け,そこで十分に乱流境界層を発達させる手法を採用した.この手法は簡便であるが,所定の乱流場を生成するためにはフィードバックをかける必要があり,今後の検討課題となった.
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