研究概要 |
メタンハイドレート層(M/H層)を掘削する場合において、掘削泥水は重要な技術要素の1つであり、M/H層からの暴噴やハイドレートの再生成などのトラブルを抑制し、安全かつ効率的なM/H層の掘削を実現する必要がある。そのため、ハイドレート分解抑制対策としてハイドレート安定生成条件(温度、圧力)に対応した低温(0〜5℃)かつ高密度泥水の使用が想定されている。一方、泥水中でのハイドレート再生成抑制対策として凝固点降下をもたらす高塩分およびグリセリンなどの多価アルコールの添加なども有効とされている。ただし、詳細な掘削シミュレーションを事前に実施するためには、掘削泥水の組成と低温度下での基礎物性(熱物性およびレオロジー特性)の把握が不可欠である。 本研究では、1999年10月の南海トラフにおけるハイドレート層の掘削を想定した掘削泥水の低温領域の熱物性およびレオロジー特性を測定し、総合的な泥水特性を明らかにすることを目的としたものである。平成10年度の研究成果として、ハイドレート分解抑効果を持たせた高塩分濃度泥水16種の温度を-5゚Cから5.0℃まで変化させ,熱物性およびレオロジー特性を測定し,それらの測定値から数値シミュレーションに使用するためのグリセリン、プロピレングリコール(PPG)およびリブダスト(掘削屑の混入を想定した物質)などの添加量に対する影響を考慮した熱伝導率,比熱およびプラントル数などの整理式を提示した。また、泥水の粘性係数に関する温度およびせん断速の関数とした整理式を提示し、その定数値の算定結果をまとめて示した。 研究成果として、主に泥水密度が熱物性およびレオロジー特性に対して影響を有することが確認された。また、温度に対する粘性係数の変化傾向を調べた結果、20℃の常温域の粘性係数値に比較して0℃ではその値が約40%から70%増加することが示された。これは、泥水密度が加重剤であるバライトなどの加重剤の添加量によって主に定まり、バライト添加量がレオロジー特性に対して影響を及ぼしたことが明らかになった。したがって、泥水密度調整によって坑井内圧の制御を実施する場合には熱物性およびレオロジー特性の変化を十分考慮した泥水成分の設計が必要であることを明確にした。
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