研究概要 |
有機相中に抽出された金属イオンを酸化物や化合物の形態で回収する晶析逆抽出法は,分離工程の簡略化だけでなく,新しい微粒子の合成法として期待できる。晶析逆抽出反応は,有機相からの金属イオンの逆抽出反応と,水相での晶析反応の逐次的な2段階反応である。逆抽出反応は有機相/水相界面で起こるため,界面での逆抽出反応速度や水相での晶析速度とともに界面積やバルク相/界面間での物質移動速度は,生成する粒子の形態を支配する大きな要因と考えられる。溶媒抽出法において超音波を利用することにより有機相および水相の2相をエマルション化することにより抽出反応が著しく促進されることが知られている。これは,エマルションの微細化の他に局所的撹拌の促進など,キャビテーション現象を代表とする超音波特有の効果に基づくと考えられている。 本研究では,この超音波照射を逆抽出反応操作に対して適用することで,晶析逆抽出反応を促進し,従来のインペラなどによる機械的撹拌では得られないような形態と均一性をもつ粒子が合成できることを明らかにした。また,研究が進むなかで,晶析逆抽出法による微粒子生成過程およびその形態に与える超音波の効果だけでなく,晶析逆抽出プロセスの基本的な現象解明および晶析逆抽出法による微粒な各種複合塩の合成にまで研究領域を広げ,本手法の基本メカニズムおよび各種複合塩の合成が可能であることを示した。
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