研究概要 |
本年度は電気探査とMT(Magneto-Telluric)法とを併用して,地下浅部・深部の比抵抗分布を明らかにすることを目的においた。この目的のために,九州中部に位置する阿蘇山の火口西側から東西5km・南北5 kmの範囲を測定対象に選んだ。ここではNEDOにより地質・温度検層のためのボーリング調査が数地点で実施されているので,比抵抗分布により推定された温度分布の妥当性を検証するのに適している。また,対象範囲の中央には北北西-南南東方向に断層が走り,これに添って3つの温泉地区が分布する。すなわち,断層が熱水の上昇のための通路となり,地熱貯留層としても重要な役割を果たしている。断層が地下の温度分布にどのような影響を及ぼしているのか,を明らかにすることも必要である。本年度の成果を要約すると以下のとおりである。 (1) 2種類の衛星画像,すなわちLANDSAT TM画像とSPOT画像から線素追跡アルゴリズムによってリニアメントを抽出し,これに数値地形モデルを重ね合わせるところ,断層は東側に80゚の角度で傾斜していることが推定された。 (2) 断層上の噴気帯において,ダイポール・ダイポール法による電気探査とシンチレーションカウンター法によるラドン濃度探査を行った。比抵抗とラドン濃度の分布から,断層の中でも特に熱水やガスの通路となり得る部分は角柱状であることが推定された。 (3) フェニックス社のV5-2000MTUシステムを用い,対象範囲の16地点においてMT探査を行ったところ,10^3〜10^<-3>Hzの広範囲の周波数域にわたって良好な見掛け比抵抗データが得られた。ボスティックインバージョンにより,この見掛け比抵抗を真の比抵抗に変換した後,測定地点のデータ間を補間した結果,深度20kmまでの比抵抗分布が明らかになった。この分布から噴気帯で比抵抗が局所的に低下し,その形状は(1)・(2)からの推定結果と調和していることがわかった。
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