研究概要 |
高温の熱水で岩盤が変質されると比抵抗が低下することから,地熱資源探査には比抵抗分布の測定が有効である。2年間にわたる本研究では,浅部の比抵抗分布は直接電流を流す電気探査で,深部の比抵抗分布の解明は本研究で購入したMT法測定装置によって行った。これらの両手法で得られた測定データにインバージョンプログラムを適用して真の比抵抗分布を求めた。測定の対象とした地域は,阿蘇カルデラ内の噴気地帯と外輪山麓の活断層である布田川断層である。なお,この断層に沿う2箇所に新期の側火山が分布することから,活断層はマグマの有力な上昇通路である。 本研究で得られた主な成果は以下のとおりである。 1.阿蘇カルデラ内の火山灰層で覆われている火口跡において,比抵抗法とIP法による電気探査を行ったところ,中心付近の下部に低比抵抗でIP効果(FE)の高い脈状構造を抽出し,この部分をかってマグマが上昇してきた火道で熱変質部であると判断した。また,阿蘇カルデラ内の噴気地である湯の谷,吉岡,地獄付近でも電気探査から熱水変質帯を抽出できた。 2.阿蘇カルデラ西部地区の格子状に設けた多数の測点においてMT法を実施したところ,深部の比抵抗分布が求まり,地表における噴気地の分布との関係がかなり明らかになった。 3.布田川断層に交差する約8kmの測線でMT法を実施したところ,深さ5kmに及ぶ低比抵抗帯が抽出でき,これを断層破砕帯と判断した。 4.電気探査とMT法を組み合わせて,浅部と深部の比抵抗分布を推定するシステムが確立できた。
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