研究概要 |
イネAOX遺伝子はすでに複数コピー存在することがゲノミックサザンハイブリダイゼーションの結果明らかとなっていたため、当研究室で同定されているAOXla,AOXlb以外のAOX遺伝子の単離、同定を行った。現在までに新たに3種類のゲノミッククローンの塩基配列を決定しており、その結果AOX遺伝子と相同性のある3種類の配列が存在することが明らかとなった。便宜上それらのクローンをAOXX,AaXY,AOXZと名付けた。AOXXはエキソン3の中に終止コドンが入っており、更にその上流にはAOX遺伝子の配列と思われる領域を一部しか持たない偽遺伝子であることが明らかとなった。AOXYは遺伝子の全領域を含んでおり、機能的な遺伝子であると考えられた。AOXZは単離したクローンがエキソン3の一部とエキソン4の領域しか含まなかったため、上流にエキソン1,2の存在する可能性が予想された。またこの推定アミノ酸配列をもとにUPGMAプログラムを用いた類縁関係の解析によって得られた系統樹から、AOXYは現在存在が確認されているAOX1グループおよびAOX2,3グループのAOX1グループに入ることが明らかになった。 常温で生育させた品種コシヒカリの幼穂より調製した切片を使用して、in situハイブリダイゼーションによりイネAOX1a遺伝子のmRNAの局在性を調査したところ、タペート特異的に強いシグナルが得られた。この結果よりAOX1a遺伝子は花芽器官の中ではタペート特異的に発現することが明らかになった。 現在、ユビキチン遺伝子のブローモーターの下流にイネAOX1a及びAOX1bのcDNAをつないだプラスミドを導入した形質転換イネを作製中である。次年度、作製された形質転換イネに低温抵抗性が付与されたかどうかを検定する予定である。
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