研究概要 |
イネシアン耐性呼吸酵素遺伝子AOX1a,AOX1b導入による低温耐性イネを作出するために、ユビキチン遺伝子のプロモーターの下流にAOX1aおよびAOX1bのcDNAをつないだイネ形質転換用のプラスミドを作製した。挿入した断片の塩基配列を確認後、アグロバクテリウム法によりイネ品種「ササニシキ」に形質転換した。これよりAOX1a及びAOX1bを導入した形質転換イネがそれぞれ17系統、30系統得られた。これらの中からそれぞれAOX1a,AOX1bの発現量の多い系統をウエスタンブロット法で調べ、3系統ずつ選抜した。AOX1a,AOX1bともに、AOXタンパク質の蓄積量のもっとも多い系統は不稔が発生したため、T_1世代の種子を全く得ることができなかった。AOXタンパク質の蓄積量が2,3番目に多い系統については種子を数十粒ずつ獲得できたので、これらの系統についてT_2世代の種子を得るために播種した。平成12年度はT_2種子の獲得が、夏期の障害型耐冷性検定の時期に間に合わなかったため、AOX1a,AOX1b形質転換イネの障害型耐冷性を検定するには至らなかった。これは今後の課題である。 低温以外の環境ストレスである、塩ストレス及び乾燥ストレス条件下においても、AOX1a,AOX1b遺伝子の発現が誘導されるかどうかを、ノーザンハイブリダイゼーションによって調べた。その結果、両遺伝子は塩ストレス及び乾燥ストレス条件下においても、転写レベルでその発現が誘導されることが明らかとなった。さらに、両遺伝子は、植物ホルモンであるアブシジン酸(ABA)処理をイネに対して行ってもその発現は誘導されなかった。従ってイネAOX1a及びAOX1b遺伝子は、ABAの関与する経路とは別の経路によって発現調節を受けていることが明らかとなった。
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