研究概要 |
メロン‘アンデス'は果実肥大期に天候不順が続くと果肉が半透明状に変化し,崩壊する「うるみ果」が収穫されることがある.そこで本研究は,遮光処理により「うるみ果」を発生させ,以下の点を明らかにした. 1. 細胞壁ペクチンの品種間差と「うるみ果」の関係 「うるみ果」が発生しやすい品種として‘アンデス',発生しにくい品種として‘ラスター'を供試し,遮光処理が細胞壁ペクチン主鎖と側鎖に与える影響の品種間差を調べた結果, ‘アンデス'では,全ペントース量が大きく増加し,かつペントース比が小さいことから,主鎖に対する側鎖の量が少ないことが推察された. 2. 「うるみ果」発生に伴う細胞壁非セルロース多糖の変化 「うるみ果」発生に伴う細胞壁側鎖中性糖組成の変化について調べた結果,ペクチンの主鎖を構成するウロン酸の総量は,成熟に伴い対照区で減少したが,遮光区では保持されることが明らかとなった.また,側鎖を構成する中性糖の総量は成熟に伴い減少したが,処理間に大きな差はなかったことから,「うるみ果」の細胞壁は,主鎖に対する側鎖の量が少ないことが推察された.さらに,水画分のウロン酸含量は成熟期間中に減少し,遮光区は対照区よりも大きく減少した.また中性糖含量も水浸症状の発生する時期には遮光区の方が少なかった.水画分の中性糖組成は成熟期間中に大きく変化しないが,遮光区ではアラビノースおよびラムノースの割合が大きく,グルコースの割合が小さかった.一方,CDTA画分を見ると,対照区は成熟に伴い両者ともに減少したが,遮光区では収穫期以降も増加したものの,主鎖に対する側鎖の量は少なかった.また,水浸症状が発生する時期以降の遮光区における中性糖組成は,ラムノースとアラビノースの割合が大きく,ガラクトースの割合が小さいことから,CDTA画分からガラクトースに富んだ側鎖の損失が推察された.
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