日本産Ostrinia属6種および日本には分布しないヨーロッパアワノメイガを含めたグループIIIの7糧53個体について、ミトコンドリアDNAのチトクロームオキシターゼ・サブユニットII(COII)遺体子682bpの塩基配列を決定し、系統解析を行った。 グループIIIの7種の間で、23のハプロタイフが見つかった。推定されたミトコンドリアDNAの系統樹においてグループIIIは単系統と異なり、グループIIIの7種ふきわめて近縁な単系統群であることが支持された。各個体間の塩基置換率は0.00-2.53%と低く、この値は他の昆虫では近縁種間または種内変異のレベルである。ミトコンドリアDNAの進化が中立で、100万年に1%の割合で塩基置換が起きると考えれば、グループIIIは最近100万年ほどの間に種分化したと考えられた。 グループIII内の種の系統関畔については、雄の中脚けい節に基づくサブグループの単系統性はミトコンドリアの系統樹からは支持されず、かわりにsmall-tibiaサブグループのメンバーであるニセアワノメイガ、ヨーロッパアワノメイガ、そしてlarge-tibiaサブグループのメンバーであるアズキノメイガの3種の近縁性が強く示された。ニセアワノメイガとヨーロッパアワノメイガは形態学的にみて非常に近縁な同胞種であると考えられているが、ミトコンドリアDNAのデータはこの扱いを支持した。他の4種については、フキノメイガとO.sp.が姉妹種であることが示唆されたが、この2種と、アワノメイガ、ゴボウノメイガの間の系統関係についでははっきりしたことはわからなかった。ゴボウノメイガとフキノメイガの関係は、ニセアワノメイガとアズキノメイガの関係とともに、形態学的には同胞種であると考えられるが、ミトコンドリアDNAからは両者の間にニセアワノメイガとヨーロッパアワノメイガほどの近縁性も姉妹関係も示唆されなかった。アワノメイガとヨーロッパアワノメイガが近縁モなかったことから、この2種のトウモロコシの寄主獲得が独立に進化したことが示唆された。
|