日本産Ostrinia属6種、および日本には分布しないヨーロッパアワノメイガO.nubilalisを含めたグループIIIの7種について、解析数をさらに増やし、系統解析の精度をあげる努力をした。 これまでに、アワノメイガ種群の7種54個体についてミトコンドリアCOll遺伝子(682bp)の塩基配列を決定して系統解析を行ったところ、アワノメイガO.furnacalisとツワブキノメイガO.sp.1を除く5種は単系統群にならず、また、得られた遺伝子系統樹においてブーツストラップ確率の低い枝がほとんどであり、樹形の信頼度が低いという結果になった。しかし、さらに分析個体数を増やすことにより、COII遺伝子系統樹の樹形の信頼度が向上するか、あるいは種間関係の解釈が多少容易になる可能性がある。とくにこれまでの研究ではフキノメイガO.zaguliaevi、ゴボウノメイガO.zealis、O.sp.1について分析個体数が不足していることが問題であった。 そこで本年度はこれら3種について重点的に固体数を追加した。アワノメイガ種群7種134頭のCOII遺伝子は39ハプロタイプにまとめられた。アワノメイガ種群に近縁なユウグモノメイガO.palustralisとウスジロキノメイガO.latipennisを外群として加え、Jukes-Cantor法によりハプロタイプ間の遺伝的距離を計算し、近隣結合法で系統樹を求めた。ブーツストラップ確率が50%以上を示した枝の数はこれまでとほとんど変わらず、そのため信頼できる枝が全枝に占める割合は低下した。つまり、サンプル数を増やしてもアワノメイガ種群の遺伝子系統樹の樹形の信頼度はあがらなかった。また、種は単系統群にならず、むしろこれまでより複雑に混ざりあう結果となった。サンプル数を増やしても、アワノメイガ種群の種間の系統関係は明瞭にはならなかった。
|