研究課題/領域番号 |
10556012
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
永田 昌男 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (70107407)
|
研究分担者 |
尾崎 正孝 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (00270893)
嶋田 透 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (20202111)
小林 正彦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (60162020)
|
キーワード | 昆虫ウイルス / 生体防御 / カイコ血液 |
研究概要 |
正常カイコ血液中に核多角体病ウイルス(NPV)の不活化因子が存在することを見出した。 血液と培養細胞で増殖させたウイルスを混合し25℃で保持すると、対照と比べ、8日後に1/10程度の活性低下が観察された。さらに、その後の解析から血液には不活化作用の阻害因子が存在することが予想され、この阻害因子は分子量フィルターで除くことが可能であった。 阻害物質と分離したNPV不活化因子をNPV粒子に作用させると、2日間はウイルス活性の変化はないが、2日後からウイルス活性の低下がみられ、8日後には1/1000に活性が低下した。本因子の血液中の活性は、4齢幼虫では認められず、5齢中期以後に上昇し、カイコの雌雄差や飼育による差異はなかった。また、Autographa californica NPVへの作用は認められなかった。 一方、血液中の不活化因子阻害物質は分子量50Kd以上であり、熱処理で阻害作用が失われた。また、NPV不活化因子によってウイルス粒子を不活化処理した後に、阻害因子を加えてもウイルス活性は復活しなかった。 不活化因子は5Kd以下の極性の高い低分子であり、熱処理及びプロテアーゼ処理に耐性であることから、タンパク質系の物質ではないと推定された。 NPVに感染したカイコ血液における不活化因子を調べた結果、感染虫の血液には、正常蚕と比べ、不活化因子の高い活性が認められた。このことにより、NPV感染にともない不活化因子活性が上昇したことが推測され、生体防御と何らかの関連があることが考えられた。
|