研究概要 |
本年度得られた研究成果はつぎのように要約できる。 これまでに、細菌が有するメタノール酸化系に関する分子遺伝学的研究としてMethylobacteriumextorquens AMlとParacoccus denitrificasのメタノールデヒドロゲナーゼ(MDH)に関連する遺伝子群が幾つか報告されているが、この両者において解析結果が必ずしも完全に一致しておらず、また、他の多くの細菌を用いた研究ではMDH-αサブユニットをコードするmxaF遺伝子の解析のみが行なわれているに過ぎなかった。そこですでに本申請者らが見いだしているL-セリン高生産性メタノール資化性細菌Hyphomicrobium methylovorumのセリン合成に直接関与する酵素メタノール脱水素酵素(MDH)とセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(SHMT)遺伝子のうちMDH遺伝子mxa発現機構について解析するために、本年度はH.methylovorum GM2のmxaF遺伝子上流および下流領域をクローニングし、塩基配列の解析からH.methylovorum GM2におけるメタノール酸化系の発現調節機構および新たなメタノール酸化に関与する遺伝子群の存在について検討した。M.extorquens,AM1のmxaF遺伝子の一部をプローブとしてH.methylovorum GM2のmxaF遺伝子を含む約15kbpの遺伝子断片をクローニングした。さらにこのDNA断片の一部をプローブとし、mxaFの下流領域を含む約7kbpのDNA断片をクローニングした。mxaF遺伝子を含む約12kbpの領域の塩基配列を解析した結果、mxaFの上流領域には、機能が未知でシグナルペプチドを有する蛋白質をコードするORFと、これまでにP.denitrificansのみで存在が報告されているmxaX,Y,Z遺伝子がH.methylovorum GM2において確認された。mxaX,Yは遺伝子の発現調節に関与するtwo-component系の蛋白質と相同性を示したことから、メタノール酸化系の発現もこの系によって調節されていることが示唆された。mxaFの下流領域にJ,G,I,R(cyt.c,MDH-βサブユニットなどをコードする)の存在が認められ、さらに下流領域にはDNA結合モチーフに類似した配列を有するORFが確認された。得られた機能が未知の蛋白質についてはさらに解析を進めている。
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