研究概要 |
微生物産業における発酵・培養原料として有望なメタノールを炭素源・エネルギー源として用いてわれわれが見いだしているC1化合物資化性細菌(C1微生物)Hyphomicrobium methylovorumの特異的な代謝系であるメタノール酸化系と資化系(セリン経路)の全酵素についての酵素とその遺伝子について詳細な情報を得、酵素系を利用する省資源型有用アミノ酸生産プロセスの開発の基礎的研究成果を得ることを目的とした。我々が見いだしているL-セリン高生産性メタノール資化性細菌H.methylovorumのセリン合成に直接関与する酵素メタノール脱水素酵素(MDH)とセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(SHMT)遺伝子のうちMDH遺伝子mxa発現機構について解析した。H.methylovorumのmxaF遺伝子上流および下流領域をクローニングした。H.methylovorumにおけるメタノール酸化系の発現調節機構および新たなメタノール酸化に関与する遺伝子群の存在についても検討した。H.methylovorumのmxaF遺伝子を含む約15kbpの遺伝子断片をクローニングした。さらにmxaFの下流領域を含む約7kbpのDNA断片をクローニングした。mxaF遺伝子を含む約12kbpの領域の塩基配列を解析した結果、mxaFの上流領域には、機能が未知でシグナルペプチドを有する蛋白質をコードするORFと、mxaX,Y,Z遺伝子がH.methylovorum GM2において確認された。mxaX,Yは遺伝子の発現調節に関与するtwo-component系の蛋白質と相同性を示したことから、メタノール酸化系の発現もこの系によって調節されていることが示唆された。H.methylovorumの特異な代謝系酵素serine-glyoxylate aminotransferase(SGAT)はセリン生産に関係する酵素であり、セリンとグリオキサル酸とのアミノ基転移を触媒しヒドロキシピルビン酸とグリシンを生成する。本酵素はピリドキサル5'-リン酸を補酵素とする。そこで本酵素の速度論的解析を行い、反応機構の推定を行った。その結果、初速度とdead-end阻害のパターンからping-pongメカニズムで反応が進行することを明らかにしたL-serine添加によって酵素はPLP-E型からPMP-E型に変化することがわかった。つづいてglyoxalateあるいはhydroxypyruvateを添加することによって酵素はPLP-E型に戻ることがわかった。これらの結果から、活性型の酵素はプロトン化されたaldimineであり、pK値7.2をもつ酵素の塩基は基質のα-アミンからのプロトンを受け触媒反応を開始することがわかった。
|