研究概要 |
我々は、血栓症治療や産業廃棄物の処理、機能性食品の創造等に応用するための新規な酵素的方法の開発を目的に、さまざまな未利用生物資源由来の多機能なプロテアーゼ(血栓溶解酵素)のスクリーニングを実施し、「地龍」と称する漢方薬の原料でもあるミミズ細胞(Lumbricus rubellus)から、非常に安定、かつ、強力な線溶酵素の単離精製に成功した、また、同時に、その酵素化学的性質や反応機構を詳細に解明してきた。 本酵素はプラスミン様のアルカリセリンプロテアーゼであり、少なくとも4種類以上の異なった遺伝子から発現される6種類のアイソザイムタンパク質であった。分子量は、それぞれ、29,662、29,667、24,664、24,220、24,196、及び、23,013であり、等電点は、それぞれ、3.40、3.60、4.20、4.00、4.30、及び、4.85を有するモノマー酵素であった。本酵素は、フィブリンのみならず、エラスチン、カゼイン、ヘモグロビンなどのタンパク質や、インシュリンB鎖やアミロイド1-40ペプチドなどを加水分解した。各アイソザイムプロテアーゼの作用機作は、それぞれ異なってはいるが、主に、トリプシン、及び、キモトリプシンの両者の作用様式に類似した特異性を有していた。また、本酵素はエステル結合を加水分解する機能も兼ね備えており、それらの触媒機能の利用の可能性も示唆された。 さらに、本酵素タンパク質を、ヒト血清アルブミンフラグメントにより化学修飾することで、ヒトに対する抗原性を無くすることにも成功し、同時に、血小板凝固作用を有しないことや、大静脈血栓の溶解能力を解析した動物実験を通して、本酵素の安全性や機能性を確認した。
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