昨年度の研究により甜菜蛇眼病菌cDNAからクローニングしたジテルペン環化酵素と高い相同性を示す遺伝子の機能解析を行うべく、E.coliにて発現させた。形質転換菌の粗酵素液を用いGGDPを基質として反応を行ったところ、炭化水素画分に生成物を検出した。GC-MS解析において保持時間、分子イオンピークから本物質はジテルペン炭化水素であることを確認したが、残念ながら目的とするアフィディコリン生合成中間体と一致しないことがわかった。しかし生産菌を種々の条件で培養したところ、発現酵素が与えた生成物と同一の物質を検出できた。 この過程でアフィディコリン生産菌菌体抽出物における中、高極性部の主成分はアフィディコリン誘導体であるが、低極性部の炭化水素画分にはGC-MS分析より、予想に反して少なくとも15種のジテルペン炭化水素を検出された。このうち4種は立体異性体の多いピマラジエン類と予想された。これまでジテルペン環化酵素では複数の生成物を与えるものは見出されていないことから、これら化合物が相当する数の酵素に由来するのかそれとも数種の酵素が複数の生成物を与えるかという長い間疑問とされてきた問題に決着をつけるのに好適な実験系であることがわかった。今回クローニングされた遺伝子は植物、微生物の既知の配列からその相同性を利用して見出されたものであることより、同じ配列を利用して本菌における他の環化酵素遺伝子を見出すことができる可能性は高い。
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