研究概要 |
1. セレクチンの真の糖鎖リガンドの探索 6-スルホシアリルLe^xエピトープが、L-セレクチンの内在性リガンドの1つであることを、我々が精密合成した6-スルホシアリルLe^xガングリオシド(6糖性)を用いて、世界で初めて明らかにした。6-スルホシアリルLe^xを糖鎖抗原として得られたモノクローナル抗体G152は、リンパ節内の高内皮細静脈(HEV)の血管壁を特異的に染色し、6-スルホシアリルLe^xエピトープが、HEVに局在するL-セレクチンの内在性リガンドであることを分子レベルで解明した(J.Biol.Chem,273,11225-11233,1998)。この発見は、更にバリアント型6-スルホシアリルLe^xエピトープに関する研究に発展し、白血球交通の分子機構解明へと進んでいる。現在、これらの新しい分子種についても精密合成を行っている(Angew.Chem.Int.Ed,38,1999,in press)。 2. セレクチン・ブロッカーの分子設計 E-,P-,L-セレクチンとシアリルLe^xとの接着を強力に阻害(ブロック)する薬剤として、我々は既にGSC-150と呼ぶセレクチン・ブロッカーを見出している。この化合物は、アトピー性皮膚炎症などの治療薬として有望である(New Technology Japan,10,13,1998)。本年度は、このGSC-150及びその新しいミミックの効率的大量合成法について検討を行い、良好な結果を得た(Bioorg.Med.Chem.Lett.,8,2845-2848,1998)。一方、スルファチドをリード化合物として種々のセレクチン・ブロッカーを設計・合成し(J.Carbohydr.Chem.,17,453-470,1998)、構造活性相関研究ならびに三次元立体構造にもとづく分子モデリングを行った(Chem.Pharm.Bull.,46,797-806,1998;Int.Immunol.,10,569-575,1998)。 3. ウィルス感染の予防を目的とした医用材料及び新バイオ素材の開発 リンゴ病を発症するパルボウィルスを、輸血用血液から選択的に除去する目的で、種々のグロボシド糖鎖を固相化し、新しいウィルス除去システムの開発に成功した。
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