研究概要 |
1.セレクチンの真の糖鎖リガンドの探索、及びセレクチン・ブロッカーの分子設計。 前年度(平10)にL-セレクチンの内在性リガンドとして同定した6-スルホシアリルLe^Xを化学合成する際に得られた6-スルホーデ-N-アセチルシアリルLe^Xが、6-スルホシアリルLe^Xよりも強いL-セレクチン結合活性を示すことを発見した(Angew.Chem.Int.Ed.,38,1131-113,1999)。この画期的な発見により白血球交通の新たな分子機構の存在が予測され、細胞の粗酵素を用いた実験により、ラクタム化シアル酸を含む新しいsLe^X分子種の存在が明らかになった。(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96,1597-1602,1999)。現在これらの新しい分子種の合成が進行している。一方,モノ及び多価硫酸化Le^X/Le^aを合成してL-セレクチンの結合阻害活性を比較検討した(J.Biol.Chem.,274,18213-18217,1999)。その結果、3'-スルホLe^a化合物に最も強い阻害作用を見出した。 2.ハイブリッド型ポリシアRガングリオシド(コリン作動性ニューロン1:特異的なα-シリーズガングリオシド)をモチーフにした脳神経疾患薬の開発研究。 ガングリオシドGD1αをリード化合物として、シアル酸の化学修飾を行った。その結果、いずれの化合物も、天然性GD1αとほぼ同等のMAG(ミエリン結合性糖タンパク質)結合活性を示した(Carbo-hydr.Res.,316,1-5,1999)。この結果から、GalNAcのC-6位に結合するシアル酸は、硫酸基のような他の陰イオン性置換基に変換できることが強く示唆された。現在、この結果をもとに、新しい神経生理活性糖脂質の検討及び合成を行っている。
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