最近、見い出された"生成物の固定化"現象(不溶性多糖類の酵素分解時に生成物が多糖と共沈)の重要な利点がある(生成物を容易かつ低エネルギー下に回収できる。優良な低分子化合物を多糖類に包接できる)。本研究は、この現象自体の基礎的知見をさらに集積し、特に、利用方法が未開発・低利用な多糖類の食品産業への応用を意図して計画された。本年度は、次に述べる研究成果が得られた。 1)昨年度、セルロースに対する生成物固定化条件が最適化されたので、実際に、オリゴ糖を調製した。セルロースにアルコール(エタノール)存在下でセルラーゼを作用させ、上清を除き、沈殿物に水を加えることで鎖長の異なるオリゴ糖を得た。それらの分離をゲル濾過法とHPLC法で行った(後者が分離と定量性に優れていた)。 2)可溶化させたキチンとキシランに対し酵素処理を行ったが、結晶性多糖類であるセルロース(セルラーゼ作用)やデンプン(イソアミラーゼ作用)の場合に比べ、高い生成物固定化量が得られなかった。現在、固定化条件の検討を行っている。 3)各種植物起源のデンプン粒を調製後、グルコアミラーゼとα-アミラーゼを作用させ、多孔体(包接体)の調製を行った。得られた酵素処理デンプン粒を走査型電子顕微鏡で観察した。コムギ、トウモロコシ、オオムギ、タピオカ由来のものに多孔の存在を確認したが、高い酵素量が必要であった。モチコムギは低酵素量で多孔体となった。但し、馬鈴薯、ショーティ、高アミロースコムギのデンプンは多孔が観察されなかった。
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