最近、見い出された"生成物の固定化"現象(不溶性多糖類の酵素分解時に生成物が多糖と共沈)には重要な利点がある(生成物を容易かつ低エネルギー下に回収できる。優良な低分子化合物を多糖類に包接できる)。本研究は、この現象自体の基礎的知見をさらに集積し、利用方法が未開発・低利用な多糖類の食品産業への応用を意図して計画され、次に述ベる研究成果が得られた。(1)セルロースi)セルラーゼを作用させ、生成物固定化現象を確認した(反応初期に約50-70%の生成物が基質とともに沈殿)。ii)沈殿中の生成物は、可溶性の短鎖オリゴ糖であった。iii)反応液にエタノールを加えると、沈殿中の生成物量が増加した。反応後にアルコール濃度を下げることで、沈殿画分からオリゴ糖を容易に回収できた。iv)本手法を用いて、オリゴ糖の調製を試みた。エタノール存在下で酵素分解を行い、上清を除き、沈殿物に水を加えることで鎖長の異なるオリゴ糖を得た。分離をゲル濾過法とHPLC法で行った。(2)キチンとキシランi)生成物固定化現象が認められたが、セルロースや澱粉粒の場合に比べ、高い保持量が得られなかった。ii)エタノール存在下や低温で処理すると、固定化量が向上した。(3)澱粉多孔体(包接体)i)分解酵素を各種植物起源の澱粉粒に作用させ、多孔体の調製を行った。起源により多孔体になるもの(コムギなど)とならないもの(馬鈴薯など)が存在した。ii)酵素量や処理時間で孔径の大きさを調節できた。iii)孔径の異なる多孔体を用いて、短鎖や長鎖のオリゴ糖に対する包接能を比較した。小孔径の多孔体は短鎖オリゴ糖を包接でき、長鎖のものは大孔径の多孔体に包接された。iv)アスコルビン酸は粒内部に移行・包接され、酸化から保護された。包接後、水溶液中に放置すると徐々に遊離し、大孔径の多孔体は保持率が低かった。
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