研究概要 |
遊離脂肪酸(FA)やリン脂質(PL),トリグリセロール(TG),コレステロールエステル(CE)など極性の大きく異なる過酸化脂質を逆相ODSカラムを用い,移動相溶媒組成を徐々に変化させながら溶出するグラジエント溶出法を適用する事により一斉分離した。更に,このカラムからの溶出液に蛍光検出試薬であるジフェニル-1-ピレニルホスフィン(DPPP)溶液を用い蛍光強度を検出するポストカラム法を採用することによりこれら過酸化脂質を一斉にpmolレベルで再現性の良く高選択的に検出・定量するシステムを開発した。更に,感度・再現性を損なうことなしにシステムのダウンサイジング化に成功し,試薬消費量を約1/10に,溶媒消費量を約1/3に減少させると同時に分析時間も約5分短縮でき,迅速化・省コスト化を図ることができた。更にODSカラムよりも,脂質を構成するアシル基の鎖長及び不飽和結合数の識別能が劣るフェニル化シルカゲルカラムを用い,新たにFA,PL,及び中性脂質(TG,及びCE)の各過酸化脂質をクラスレベルで分析できるセミミクロシステムを開発した。このシステムにより2pmol〜150pmolレベルの過酸化脂質を約30分で再現性良く分析できた。更に,試料導入部を一部改良する事により,90μlまでの試料の導入を可能とし,オンライン濃縮法に関連する技術を確立した。 このシステムを用い,新しい活性酸素の消去システムとして報告されたX(活性酸素種)-Y(触媒種)-Z(受容種)化学発光系の評価を行った。その結果、この系が実際に過酸化脂質消去系として働いていること,更にMnイオンなどの金属イオンの添加により増幅される事を確認した。また,食品中の過酸化物消去成分の検索に応用し,いくつかの食品中に強い過酸化脂質消去活性があることを明らかとした。これらの活性は過酸化脂種により異なった事から,これらを一斉分析できる本分析システムが非常に有効であった。
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