研究概要 |
イネを中心とした澱粉合成関連遺伝子の穀物澱粉改変への利用の可能性を追及することを目的として,澱粉合成関連遺伝子に関する研究を行い,以下の成果が得られた。 1.イネ登熟種子枝つけ酵素RBE4の遺伝子発現をRBE1とRBE3のものと比較したところ,種子の登熟過程のより初期段階で発現していることが明らかとなった。また,RBE4は,登熟種子だけでなく葉でも顕著に発現しており,おそらく通常の枝つけとは異なり,澱粉合成酵素と共同でアミロペクチン初期の合成,例えばアミロペクチンプライマーの合成などで重要な役割を果たしていることが示唆された。 2.RBE1,RBE3,およびRBE4の実用化を考慮しながら,それぞれの組換え型酵素をアミロースに作用させて,陰イオン交換パルスアンペロメトリー高速クロマトグラフィーで分枝鎖長変化を解析した。RBE1は10グルコース単位以上の鎖を優先的に転移させたが,RBE3は6〜7グルコース鎖に対して反応性が高かった。また,RBE4は,RBE1とRBE3の中間的な反応様式であった。アミロースの老化防止など工業的に利用する酵素としては,一見,RBE3が適しているように思われるが,酵素自体の反応性の強さを考慮するとRBE1が最も適した酵素であるといえる。 3.2個のトラマメ枝つけ酵素アイソザイム間で,N末端およびC末端領域の一部を置換したキメラ酵素を作製し機能を解析した。その結果,C末端領域はアミロースに対する親和性と転移鎖長の長さを規定していることが示唆された。また,N末端領域の置換によって,クエン酸による酵素の活性化が起こること,さらに,N末端から約100アミノ酸残基が澱粉粒結合に関係することを見いだした。
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