研究概要 |
既交尾のマツノマダラカミキリ雌成虫の受精嚢腺,卵巣,およびその他の生殖器官を別々にメタノールに-20℃で1週間浸漬した。濾過と濃縮後,O.4頭相当の抽出物を1mm×1mmの濾紙に付け,乾燥後,アカマツ小丸太の中央に作った疑似産卵痕内に置いた。異なる20頭の雌を用いて,1頭ずつに小丸太1本を与えて,雌成虫が始めて疑似産卵痕に出会った時の反応を記録した。その結果,受精嚢腺の抽出物に対しては,産卵行動を途中で止めて産卵をしなかったが,卵巣とその他の生殖器官の抽出物やメタノール(対照)に対してはそれぞれ3 3,4頭が産卵した。O.08頭相当の受精嚢腺抽出物を置いた小丸太に14頭の雌成虫が反応したが,全個体が産卵行動を途中で止めて,産卵までに至らなかった。しかし,対照では産卵する個体が見られた。-20℃で1〜3年間保存していた394頭の既交尾雌から受精嚢腺を取り出してメタノールに浸けた。ホモジナイザーを用いて磨砕した後に遠心して,上澄のメタノール抽出液をメタノール不溶分(画分1),アセトン不溶分(画分2),アセトン可溶分(画分3)に分画して,O.4頭相当の抽出物を用いて上述の生物検定を行った。画分1が最も強い産卵抑制効果を示したが,画分2と3は対照と同じように効果を示さなかった。画分1をさらにタンパク質を含むメタノール不溶分(画分1・a)とタンパク質を除去したメタノール可溶分(画分1・b)に分けた。画分1・aと1・bは対照と同じように産卵抑制効果を示さなかった。そこで,画分1・aと1・bを混合したが,効果は失われていた。
|