研究課題/領域番号 |
10556042
|
研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
土居 修一 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 教授 (20279508)
|
研究分担者 |
今村 祐嗣 京都大学, 木質科学研究所, 教授 (70151686)
大村 和香子 農林水産省, 森林総合研究所, 研究官
青山 政和 北海道立林産試験場, きのこ部, 主任研究員
吉村 剛 京都大学, 木質科学研究所, 助教授 (40230809)
栗本 康司 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 助手 (60279510)
|
キーワード | シロアリ / ベイトシステム / カラマツ材 / 蒸煮処理 / 摂食促進 / キチン合成阻害 / フラボノイド / 抽出物 |
研究概要 |
新たな、環境汚染性がなく安全性の高いシロアリ防除システムが求められており、その一つとしてベイトシステムが提案され既に最近日本国内で上市されている商品も登場した。これは、住宅などに被害を与えているシロアリの巣に、きわめてわずかなキチン合成阻害剤(哺乳動物には影響を与えない)など、遅効性で、忌避性がなく、コロニー全体に行渡りやすい薬品を添加した餌を持ち込ませて、シロアリの外骨格形成を妨げ、最終的に世代交代を不可能にしコロニーを絶滅するシステムである。現在このシステムを日本のシロアリ被害防除に十分な効果を上げるべく様々な試みが行われてはいるが、このシステムの成果を大きく左右する餌としては腐朽材あるいは素材が利用されているので、その集蟻効果が十分でないという問題がある。そこで、蒸煮カラマツ材がイエシロアリおよびヤマトシロアリの摂食を激しく刺激することを世界で初めて発見し、この現象が蒸煮の結果生成した高極性物質に起因していることを示唆した。そして、この現象を利用すれば、これまでに試みられているシステムよりはるかに効率的なベイトシステム構築が可能であろうという結論に至った。 実験的、及び野外試験の結果から蒸煮材を利用するベイトシステムの構築はほぼ完成の域に近づいたと考えられるが、実用化のためには実際の被害現場におけるケーススタディをできるかぎり多く実施しなければならない。 また、この研究の途上で、カラマツ材に含まれるフラボノイド類のシロアリに対する忌避性が強いことを明らかにすることができた。幸いなことにカラマツ材中のフラボノイド類が他の材に含まれるそれらより高い忌避性を示すことから、さらに新しいシロアリ防除システムへ応用できる可能性が明らかとなった。それは、物理的防除法とフラボノイド類とのコンビネーションを意図するものであるが、これら一連の、カラマツを利用したシロアリ防除システムが完成すれば、将来的には、たとえば北海道あるいは東北ブロックを核とする、産業クラスタの構築によっていわゆる地域資源循環型産業が成立することになる。今後はベイトシステムのみならず、さらに研究対象を拡大して木材産業、鉱業などの振興、あるいは過疎化地域の活性化につながる。
|