西南諸島では恒常的な干ばつ・天候に左右される不安定な農業経営を余儀なくされている。このような背景のもとに、沖縄本島・宮古島・喜界島などでは地下ダムに関する調査が進められ、試験施工を経て本格施工に移行している.しかし、地下ダムは地下に設置されるため、建設が進むに伴って新たに浮上してきた問題も少なくない.本(初)年度は、次の3項目について基礎的な研究を行った.(1)豪雨に伴う地下水の異常上昇の予測:地下水流動の非定常・3次元有限要素モデルを開発した。これを宮古地下ダムに適用して、豪雨時における地表面よりの雨水浸透と止水壁周辺部の3次元流動との関連性を検討した.その結果、豪雨後しばらくしてから地下水の上昇が始まるため、ポンプ揚水によって対処しうることなどが明らかになった.(2)多孔体中の流れ状態の変化に伴う揚水量の減少機構:多孔体中の流れ(浸透流)が層流から遷移領域を経て乱流に移ることによる抵抗変化を、ナビヤー・ストークス方程式を用いて数値実験的に調べ、このような抵抗変化が揚水量の減少につながっていることを明らかにした.(3)塩水浸入調査法:地下ダムを海岸近傍に設置する場合には、ダムサイトに海水が浸入している場合が少なくない.しかし、塩水の浸入を定量的に明確にすることは容易ではない.ここでは、電気探査法(比抵抗法)による塩水浸入調査法を提案し、基準化Powell法を併用することにより、確実な探査法にすることができることを示した.
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