研究概要 |
本研究では,キクの苗生産において,水揚げから植え付け作業に至る行程を行うロボットシステムを開発することを目標に,分離・供給装置,挿し穂認識アルゴリズム,整形装置,植え付け装置から構成されるシステムを考案し,基礎実験を行った。 挿し穂の分離・供給装置は,主にマニピュレータ,水槽,TVカメラから構成されており,水面に起こした波を利用して穂の束を分離し,画像処理によって最も孤立した穂を順に検出してマニピュレータが一本ずつ把持する。実験の結果,90%を越える成功率で,穂に損傷を与えることなく良好に分離することが可能であった。穂をマニピュレータで一本ずつ搬送するための把持位置の基準点の認識アルゴリズムには,穂の形状的な特徴を利用した。その結果,誤認識することなく良好に検出が行われた。穂の不要な下葉を除去するための整形装置は,切断およびせん断力を利用した2種類の装置を試作した。切断式整形装置では,開閉部にY字形のカッタを有する装置を2組90度間隔で設置することで,穂の向きに関わらず90%の成功率で穂の整形を行うことができた。フィンガを上下移動させて葉柄の根元から下葉を除去するせん断式整形装置では,85%の成功率を得た。トレイに穂を植え付ける装置においては,10本の穂を同時に植え付ける構造とした。植え付け深さによる評価を行った結果,装置単体では約95%の成功率を得た。 各実験結果より,本ロボットシステムの有効性が確認された。しかし,主茎が大きく曲がった穂などに対しては失敗するケースが確認されたため,ロボット作業に適した穂の検討を行えば,さらに成功率は向上すると考えられた。
|