研究課題
体細胞を用いた核移植技術の研究では核質(体細胞)と細胞質体(除核卵子)の細胞周期について検討を行った。まず、体細胞(卵丘細胞)に血清飢餓、コンフルエント培養あるいはアフィジコリン処理を施して細胞のサイズと細胞周期の関係を調べた。その結果、いずれの培養・処理においても高頻度に採取できる中型の細胞は、血清飢餓およびコンフルエント培養では約95%がG0/G1期、アフィジコリン処理では約70%がS期に同調されていることが明らかになった。ついで、これらの処理を施した卵丘細胞を核質とし、第二減数分裂中期(M期)あるいは活性化処理後(S期)に除核した卵子を細胞質体として用いた核移植を行い、核質と細胞質体の細胞周期の組合せについて検討した。その結果、G0/G1期の核質とM期の細胞質体の組み合せで作製した核移植胚は発生率が最も高く、胚盤胞までの発生過程と染色体の数的異常の程度は体外受精胚とほとんど差異のないことが分かった。種々の発育過程にある卵巣内卵胞の卵子を核移植の細胞質体として活用するため、牛一次卵胞の採取・培養法と初期胞状卵胞の発育培養について検討した。その結果、初期胞状卵胞由来卵子は8日間の培養により直径110μm以上に発育し、成熟培養によりMII期に達することが分かった。また、一次卵胞は採取法により回収卵胞数と生存率に大きな違いのあること、形態学的分類により生存卵胞の選抜が可能であり正常と判定された卵胞は体内発育卵胞に類似する発育能を有することが判明した。さらに、前胞状期卵胞の凍結保存法を開発するため、マウスの前胞状期卵胞の発育培養と低温保存法についても検討を加えた。その結果、前胞状期卵胞由来卵子の約20%が体外受精後に胚盤胞へ発育すること、ガラス化した前胞状期卵胞由来卵子も低率ながら発育することも確認できた。
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